救急車やパトカーのサイレンは横を通ったときにピッチが変化して聞こえます。
あの一瞬に何が起きているのでしょうか?
本記事は、身近な音程の変化を入り口にドップラー効果を解説します。高校物理を忘れた人でも、読み終わるころには「だから音が変わるのか!」と納得できるはず。
さっそく行ってみましょう!
ドップラー効果って何者?
Oxford Languagesの定義
救急車のサイレンの音が近づく時は高く、遠ざかる時は低く聞こえる例のように、波動の源と観測者との少なくとも一方が動いている時に、観測者のとらえる振動数が源の発するのと異なる現象。
ざっくり言うと、
- 音源が近づく→波が圧縮→周波数アップ → 高い音に聞こえる
- 音源が遠ざかる→波が引き伸ばし→周波数ダウン → 低い音に聞こえる
耳で感じるドップラー: 日常ネタ2選
シーン | どこがドップラー? |
---|---|
救急車のサイレンやパトランプの音 | 近づくとき高い/遠ざかるとき低い |
乗り物の通過音 | 通過の瞬間が最も高いピッチ |
波の視点で見る仕組み
音源だけ動く場合
スピーカーは、音の波を前に出しながら、自分自身も前に進みます。すると、前に出した波を自分で追いかけて、次の波を出すことになります。その結果、音の波が進行方向でぎゅっと圧縮され、波と波の間隔(波長)が短くなります。波が詰まった状態でAさんの耳に届くため、高い音に聞こえます。
逆に、スピーカーがBさんから遠ざかっていくとき、救急車は音の波を出した後、その波から離れるように進みます。すると、音の波が後方にビヨーンと引き伸ばされ、波と波の間隔が長くなります。波が間延びした状態でBさんの耳に届くため、低い音に聞こえます。
観測者だけ動く場合
Aさんがスピーカーから遠ざかるように走ると、やってくる音の波から逃げるような形になります。そのため、1秒間に耳に届く波の数が減ってしまいます。波がやってくる回数が減るので、振動数が小さくなり、Dさんには低い音に聞こえます。
逆に、Bさんがスピーカーに向かって走っていくと、本来なら次々にやってくる音の波に、自分から突っ込んでいくことになります。すると、1秒間に耳に届く波の数が増えます。波がたくさんやってくるということは、振動数が大きくなり、Cさんには高い音に聞こえます。
これがドップラー効果。
音源・観測者が動くことで、観測者に届く波の間隔(波長)が変わり、結果として音の高さ(周波数)がズレて聞こえる現象だとわかります。
式で納得したい人へ!
$$ f’ = \frac{v + v_{obs}}{v \ – v_{src}} \times f_0 $$
記号の意味:
- \(f’\): 観測される周波数
- \(f_0\): 音源が静止しているときの周波数
- \(v\): 音速(約 \(340 m/s\))
- \(v_{obs}\): 観測者速度(音源へ+)
- \(v_{src}\): 音源速度(観測者へ+)
2つの典型パターン
- 音源だけ動く $$ f’ = \frac{v}{v \ – v_{src}} \times f_0 $$ 近づくとき \(v_{src} > 0\) → 分母が小さくなり\(f’\)上昇。
- 観測者だけ動く $$ f’ = \frac{v + v_{obs}}{v} \times f_0 $$ 観測者が近づくほど単純比例で周波数アップ。
音波だけじゃない! ドップラー効果の活用例3選
気象レーダー | 電波版ドップラーで雨雲の動きを3D測定 |
ドップラー超音波 | 血流速度をカラー表示、医療診断の定番 |
レーダーパトカー | 電波版ドップラーでスピード違反の取り締まり |
豆知識:1845年ドップラー効果の実験
1845年、オーストリアのChristian Dopplerの理論を実験的に証明するため、オランダの気象学者Christophorus Henricus Diedericus Buys Ballotは、無蓋車(屋根のない列車)にトランペット奏者を乗せ、同じ音程の音を演奏させながら線路上を往復させました。軌道脇に待機した絶対音感を持つ音楽家は、音程の変化を確認。これにより、ドップラー効果が実際の音波でも起こることを明確に実証しました。
まとめ
「音源、観測者どっちが動いても周波数が変化! 詳しい変化量を知りたい場合は計算で求めよう!」
別記事でドップラー効果を活用した実践的なテクニックなども紹介しています。
ご興味のある方はこちらも参照してみてください。
番外編記事リンク↓
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